通説以上、陰謀論未満

他のブログと異なる点:論文や学術本を根拠に示しているため、より信頼度の高い情報を提供いたします。

2023-01-01から1年間の記事一覧

ふるさと納税はなぜ学者から嫌われているのか?

ふるさと納税ほど経済学者から嫌われている制度は無い。特定のグループから批判されたインボイス制度と異なり、おしなべて批判的な意見が多い。 本記事では、ふるさと納税の欠陥を、論文と共に紹介する。

「ジョブ型=理想」は危険? ジョブ型に対する3つの誤解

経団連第5代会長の中西宏明氏が「日本の雇用慣行を見直すべき」と提言してから、ジョブ型雇用の波が再び始まった*1。それと同時に、ジョブ型に対する過大な幻想も広まっている。本記事では、ジョブ型に対する3つの誤解と、あまり注目されていないメリットを…

「坂本龍馬」という、ほぼ架空の人物について

日本人の「坂本龍馬像」は、ほとんど事実に基づかないといっていいだろう。これは私個人の意見では無く、多くの学者が指摘していることだ。「薩摩と長州の間に立って同盟を結ばせた」「大政奉還を成功させた」「船中八策を書いた」「亀山社中という名前の組…

数々の論文「MBTI診断は デタラメ」

「MBTI診断」という性格検査が、10年前アメリカで流行り、今は韓国と日本で流行っている。しかし、多くの論文によってMBTI診断がデタラメだということが示されている。

【イスラエル・パレスチナの紛争】を学びたい人のための、おすすめコンテンツ4選

2023年10月7日現在、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスが、イスラエルに向けて多数のロケット弾を発射した。イスラエルのネタニヤフ首相は「われわれは戦争状態にある」と声明を出した。 これを機に、イスラエルとパレスチナの紛争につ…

一院制は危ない

日本政治は、衆議院と参議院を両方有する「二院制」の形をとっている。しかし戦後には、「参議院は、衆議院と同じことしてるから要らないじゃん」という批判があった。さらに、2007年以降に衆参で多数派が異なる「ねじれ国会」が常態化し、「参議院が強すぎ…

本屋で 歴史本を買うことが、危険な理由

「歴史好き」の人が、歴史学者と話が合わない、というのはよく聞く話だ。なぜなら、「歴史好き」はつまらない事実より面白いストーリーを優先するのに対し、歴史学者は面白いストーリーよりつまらない事実を優先する傾向にあるからだ。 本記事は、小説家によ…

ヒトラーは「アウトバーンで失業者を救った」の嘘

ヒトラーが「アウトバーンを作った」「それを軍用道路として活用した」「雇用を生んだ」「それがケインズ政策のパイオニアになった」「だからヒトラーは凄い」という言説は誤りだ。以下より、学術研究を根拠に、誤りである理由を述べる。

「食品添加物/化学物質は悪くて、無添加は良い」という誤解

食品添加物について詳しく書かれた良い記事を見つけたため、共有したい。 学会で高く評価されている唐木英明 東京大学名誉教授にインタビューした記事であるため、信頼に値するだろう。要点だけ掴みたい方は、太字の部分と最後のまとめに目を通して欲しい。

「若者の〇〇離れ」は、根拠も、言う意味も無い

「若者の〇〇離れ」というフレーズをよく聞く。しかし、根拠が曖昧だったり、根拠が正しくてもそれが「悪いこと」であるかのように見せたり、良い傾向とは言えない。本記事では、「若者の〇〇離れ」を叫ぶ記事の一部が、根拠や言う意義が無い理由を説明する。

非公開=悪、黒塗り文書=悪 とは限らない

「非公開の委員会」「黒塗りの文書」と聞くと、悪いことをひた隠しにしているようなイメージを受ける。しかし、ノルウェーの社会科学者 ヤン・エルスターらは、非公開のメリットを指摘する。さらに、行政文書を黒塗りにしなければならない場合もある。今回は…

商店街を潰した「大店法」の正体

と末恐ろしいタイトルを付けたが、本記事では、「大店法」という悪名高い法律について、研究者の本を参考にしながら解説する。イトーヨーカドーや地元の商店街は、「大店法」下でどのように繁栄・衰退したのだろうか。

途上国支援で得するのは、支援先だけではない

先進国が発展途上国を支援するとき、得するのは支援された発展途上国だけではない。支援した先進国も、援助することで経済的・外交的なメリットを得ている。今回は、日本のODAとベルギーのルワンダ援助を例に、そのカラクリを説明する。

ブランド品・選挙・株式投資・金融監督の、意外な共通点

「トレンドの服を着て流行りに乗りたい」「勝ちそうなところに味方して、自分も利益を得たい」。そうした行為は、日本語で「勝ち馬に乗る」、英語では「バンドワゴンに乗る」と表現される(以下「バンドワゴン効果」)。バンドワゴン効果は、ブランド品、選…

「自分の若い頃に納めた保険料の分が、自分の年金になる」という誤解

年金に詳しくない方は、しばしば「自分の若い頃に納めた保険料の分だけ、自分の年金になる」という勘違いをしている。しかし、実際は「今の若者が今のお年寄りに仕送りしている」というのが正しい理解だ。

スポーツの国際大会は、自国を平和にするが、他国に攻撃的になる

オリンピックは「平和の祭典」と呼ばれるが、果たして本当だろうか。論文によると、スポーツの国際大会は、確かに自国を平和にするそうだ。肌の色に関わらず国民が一致団結して応援することで、民族的な不信感を減らすことができるからだ。しかし、国内が団…

「相手に響くプレゼン」とは結局何なのか、論文を基にガチで調べてみた

プレゼンテーションや説得の方法は、数々の本で紹介されている。結局何を信用すれば良いのか?本記事では、論文を基に説得の方法を調べた。「説得には、エトス・ロゴス・パトスが大事らしいよ」という浅い理解では終わらせない。

予測に希望的観測を混ぜるな 〜日本企業と日本陸軍から学ぶ〜

政府や会社が「今後成長するだろう」という時、「(これらのデータから)今後成長するだろう」という予測ではなく「今後成長するだろう(と願いたい)」という希望的観測をしてしまうことがある。予測に願いを混ぜてしまう失敗はしばしば指摘されるが、本記…

メルケルとプーチン「前任が頑張ってくれたから楽に支持率取れるわ〜♪」

「今の首相になってから景気が悪い!」「この人のおかげで日本は良くなった!」と言うが、本当だろうか。よく分析すると、前任が頑張ったおかげで、その成果が遅れて出ることで、現職の政治家が漁夫の利を得ているかもしれない。不景気は、世界経済の流れが…

「保守=新しいこと嫌いな伝統主義」とは限らない

保守と聞くと、伝統から頑なに離れない政治家を想像する人も多いだろう。しかし、保守思想の父と呼ばれるエドモンド・バークは、アメリカの独立を支持していた上に、後の自由党であるホイッグ党に所属していた。伝統から離れないはずなのに自由だらけだ。こ…

「中立が大事」という固定概念

何かを発言する際は「中立でなければならない」という固定概念がある。しかし、ある研究機関は、そもそも存在しない中立を諦めて、冒頭に「偏っています」と主張することを勧めている。

作家が死んでも作品は続く

作家が死んだ後も作品は続く。株式会社は創業者が亡くなっても続く。有名人が死んでもその人のツイートは残り続ける。研究者が死んでもその人の論文は50年後も引用される。ゴッホは死んだ後に作品が売れた。私たちが死んでも、私たちの話し方を真似たAIが私…

アメリカ大統領の権限は、そこまで強くない

日本の首相に比べて、アメリカ大統領の権限は強く見られがちだ。しかし、日本の首相の権限は強く、アメリカ大統領の権限は国内政治において比較的弱い。その理由を3つ説明する。

良い天下りもある

悪名高い天下りだが、3つのメリットもある(あった)。

「多様性が大事だから、移民の文化を全て受け入れよう」←ちょっと危険

人手不足の解決策として、しばしば移民が議論される。しかし、「移民の文化も大切にしよう。多様性の時代だから。」と考えるのは安易だ。もちろん差別してはならないが、多様な文化を一箇所に集めると、社会秩序が乱れる可能性があるからだ。

「エビデンス」は「根拠」という意味ではない

「エビデンスが必要です」「エビデンスが足りません」など、エビデンスという言葉はしばしばビジネスで使われる。しかし、「根拠がある」をかっこよく言い換えるために存在する言葉では無い。学術的にエビデンスとは、どのような意味だろうか。

ネットメディアには「建設的でない議論」が必要

ネットメディアが視聴者を逃さないためには、煽ったり、対立構造を作ったり、単純化したり、ある種「建設的でない」議論が必要だ。今日はそんな邪推を述べる。

脱炭素が嫌いな人も、脱炭素をすべき理由

地球温暖化を止めるために脱炭素を主張する人も、脱炭素なんて不可能だと反対する人も、手を組めるところがある。それは、今まで通り金稼ぎをして、今まで通り安全保障を維持するために、脱炭素をするという目的だ。

メラビアンの法則を引用して「内容より話し方が大事」と言うのは誤り

デート術やプレゼン術において、「話す内容より話し方が大事」と語られることは多いだろう。それ自体は問題ないのだが、楽して説得力を持たせるために、メラビアンの法則を雑に引用する人が多い。結論から言うと、「話す内容より話し方が大事」の根拠にメラ…

中国とロシアって仲良いの?悪いの?

A. どちらでもない、微妙な距離感 である。 仲良い側面と仲悪い側面に分けて、それぞれ二つずつ例を出そう。