作家が死んだ後も作品は続く。株式会社は創業者が亡くなっても続く。有名人が死んでもその人のツイートは残り続ける。研究者が死んでもその人の論文は50年後も引用される。ゴッホは死んだ後に作品が売れた。私たちが死んでも、私たちの話し方を真似たAIが私の代わりに生き続ける。
本記事は、「死後も生き続ける作者の魂」について考える。
- 作者の死後も続く『ゴルゴ13』
- 創業者が死んでも会社は潰れない
- 研究者の魂は、論文となって死後に生き続ける
- 藝術家は死後に作品が有名になることも
- デジタルの世界でみんなそうなる
- 生きているうちにたくさんアウトプットしよう
作者の死後も続く『ゴルゴ13』
漫画『ゴルゴ13』は、作者さいとう・たかをの死後も、さいとう・プロダクションによって連載が続いている。
さいとう・プロダクション設立後は、作品制作過程における分業化をはかり、脚本部門を設けるなどマンガ界に革新をもたらした。(中略)なお「ゴルゴ13」が連載中のビッグコミック(小学館)の公式サイトでは、今後の連載について言及。さいとうが生前から「自分抜きでも『ゴルゴ13』は続いていってほしい」という希望を持っていたことを受け、「さいとう・たかを氏のご遺志を継いださいとう・プロダクションが作画を手がけ、加えて脚本スタッフと我々ビッグコミック編集部とで力を合わせ『ゴルゴ13』の連載を継続していく所存です」とコメントを寄せた*1。
創業者が死んでも会社は潰れない
会社は、創業者が死んだ後も潰れるわけではない。
経済学の大家である岩井克人は、法人を「自然人ではないものの法律上の人格が認められ、それゆえに権利・義務の主体となる存在のことである。法人化された企業である会社は、モノでありながらヒトであるという二面性を持つ」と表現する*2。
創業者が死んだとしても、法的に認められた「ヒト」としての会社は存続する。
研究者の魂は、論文となって死後に生き続ける
研究者が50年前の論文を引用するとき、その論文を書いた当本人はもう亡くなっている、なんてことは日常茶飯事だ。極端な例を出すと、フェルマーの小定理が代表的だろう。フランスの数学者フェルマーは、その昔、フェルマーの小定理と呼ばれる素数に関する定理を発見した。その330年後、アメリカの3人の数学者が、フェルマーの小定理を用いて「RSA暗号」を開発した*3。この暗号は、今日のインターネットにおける暗号化に役立っている。
フェルマーの頭脳が、330年の時を経てインターネットに生かされたのだ。
藝術家は死後に作品が有名になることも
作曲家、小説家、画家は、死後に作品が有名になることも多い。
ゴッホ、モネ、ゴーギャンなど、彼らの魂は作品の中で今日の私たちを魅了する。
デジタルの世界でみんなそうなる
上記の話は、学術や藝術といった一部の人たちだけの話ではない。
我々も、Twitterやブログを通して、死後も魂が残る。休止したアーティストのツイートは今でも見れるし、このブログ記事も2100年の人類が読んでいるかもしれない。
AIが発展した現代社会では、親が亡くなっても彼らの音声データさえあれば、子供に読み聞かせできる。
生きているうちにたくさんアウトプットしよう
上記の例を参考にして我々ができることは、以下の二つだ。
①自分の伝えたいことを、会社/絵/音楽/小説/SNS に込める
②自分が死んだ後も後世に多くを伝えられるよう、生きているうちに①を繰り返す
自分がいなくても回る、だが自分が社会に対して行いたかったビジョンは残される株式会社を起業しても良い。ネットで漫画を投稿しても良い。100年後の子供達に伝えたいことをツイートしても良い。歴史的な文脈に自分を位置づけることで、自分の魂を死後も生かせられる*4。
*1:コミックナタリー編集部「さいとう・たかをが膵臓がんのため死去、『ゴルゴ13』の連載は継続」、コミックナタリー、https://natalie.mu/comic/news/447132
*2:岩井克人(2009年)『会社はこれからどうなるのか』、平凡社
*3:菅谷孝(2007年)「RSA暗号 ~360年の時を越えて~ (数学科)」、富山大学理学部広報委員会情報・広報部会、https://www.sci.u-toyama.ac.jp/topics_old/topicsOctober2007.html
*4:もっとも、「後世に何か残したいという気持ちが全く湧かない」という考えも尊重されるべきだ。