通説以上、陰謀論未満

他のブログと異なる点:論文や学術本を根拠に示しているため、より信頼度の高い情報を提供いたします。

数々の論文「MBTI診断は デタラメ」

「MBTI診断」という性格検査が、10年前アメリカで流行り、今は韓国と日本で流行っている。しかし、多くの論文によってMBTI診断がデタラメだということが示されている

 

MBTI診断とは

そもそもMBTI診断とはなんだろうか、どういう経緯で流行ったのか、についてはこの記事が詳しい*1

 最近、日本の若者のあいだでもブームになっている「MBTI診断」。日本MBTI協会の公式サイトの記述によると、「ユングのタイプ論をもとにした、世界45カ国以上で活用されている国際規格に基づいた性格検査」で、「ものの見方(感覚・直観)」、「判断のしかた(思考・感情)」、「興味関心の方向(外向・内向)」、「外界への接し方(判断的態度・知覚的態度)」の4つの指標によって、性格を計16タイプに分類して捉えるものだという。

 MBTIは特に韓国で大ブームになっており、K-POPアイドルたちのあいだで話題に上ることも多い。(中略)火付け役になったのはBTSをはじめとする人気アイドルたち。アイドルがYouTubeなどで配信するコンテンツ動画のなかで、このMBTIを話題にしたものが増え、そこからファンの間でも一気に広まりました

 

数々の論文「MBTI診断は デタラメ」

しかし、多くの論文によって、MBTI診断がデタラメであることが分かっている。

 

具体的には、MBTIの参照するユングのタイプ論が問題視されており、①性格を上手く概念化できていない(例えば「あなたは外向性が高いです」と言った時、その「外向性」を適切に定義できていない)、②性格に測定できていない、といった批判がある。

https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/00223891.2018.1481078

https://compass.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/spc3.12434

 

加えて、心理学の大家であるブライアン・R・リトル ハーバード大学教授は、MBTIの診断結果が毎回同じにならないことや、他のパーソナリティ検査と比して大きな研究基盤が無いことを問題視している。*2

 

その結果、心理学で確立された性格診断「ビッグ・ファイブ」とMBTIを同じ人が受けたとしても、その診断結果はほとんど一致しない。同じく心理学の大家であるエイドリアン・ファーナム ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン大学教授による、9000人以上を対象とした研究だ。

The Big Five Facets and the MBTI: The Relationship between the 30 NEO-PI(R) Facets and the Four Myers-Briggs Type Indicator (MBTI) Scores

 

およそ10年前、既に論破されていた

今回のMBTI診断ブームは、K-POPアイドルから日本の若者の間に広まったが、およそ10年前にアメリカでも大ブームになった。そして、同じように多くの研究者から批判を受けていた。

 

8年前、Youtube投稿された「なぜMBTIは全く無意味なのか」という動画だ。いくつかの学術論文を参照している。

www.youtube.com

 

 

こうしたMBTIのようなデタラメ心理学が跋扈してしまうのは何故だろうか。それは、曖昧な表現で指摘されると、あたかも「この診断は私の内面をぴったり当てている!」と誤解するバイアスが働くからだ。

これは「バーナム効果」と呼ばれ、心理学でよく語られる認知バイアスの一つだ。

「あなたは一人で抱え込むタイプです(←抽象的)」と、広くぼんやりと診断すると、診断された人は「最近お風呂で考え事してたからなぁ(←具体的)。すごい、当たってる!信頼できる!」と誤解してしまう。

 

「当たってる感じがする」ために、みんなでやると楽しくて、会話のネタになるのだろう。もちろん、趣味として楽しむツールには問題ない。しかし、会社で「社員の性格をMBTIで判断し、その診断結果に合った役割を与えよう」と考えるのは危険だ。

*1:https://www.moneypost.jp/1047658

*2:ブライアン・R・リトル(2016年)『自分の価値を最大にするハーバードの心理学講義』、児島修 訳、大和書房、p. 52