ネットメディアが視聴者を逃さないためには、煽ったり、対立構造を作ったり、単純化したり、ある種「建設的でない」議論が必要だ。今日はそんな邪推を述べる。
「朝まで生テレビ」や「Abema Prime」を観る層
社会問題に興味がある人は、ざっくり二種類に分類される。
まずは、研究者などの「ガチ勢」だ。彼らは、ネット番組を観る暇はなく、本業として学術的な論文や雑誌、書籍を優先して読む。
もう一種類は、「朝まで生テレビ」や「Abema Prime」といった報道番組を観る「エンタメを求める層」だ。というのも、彼らは、論文を読むまでの時間や気力は無いが、社会問題には興味がある。
「朝まで生テレビ」や「Abema Prime」を観る層は、そもそも「エンタメを求める層」であることに注意が必要だ。
ネットメディアに必要な「エンタメ」
ここでいう「エンタメ」とは、対立構造や単純化のことだ。
「朝まで生テレビ」や「Abema Prime」の視聴者には、対立構造や単純化が少々必要だ。
しばしば「雑な対立構造ではなく、各コメンテーターのコメント時間を長くして、対立を煽らずに、複雑なことを複雑なまま議論しよう」と言う人もいるが、上記のネットメディアでは難しいだろう。
なぜなら、番組は一定の視聴率が必要だからだ。
「各コメンテーターのコメント時間を長く、対立を煽らずに、複雑なことを複雑なまま議論」する映像は、実はYoutubeにたくさん転がっている。大学教授たちの議論だ。
例えば、東大TV / UTokyo TVを観て欲しい。
討論番組で見るコメンテーターと異なり、博士を取って論文を書く教授たちによる、「対立を煽らない、複雑なことを複雑なまま話す、建設的な議論」が動画としてアップロードされている。非常に質の高いチャンネルだ。
しかし、視聴回数は3000回くらいで、Youtube動画の中ではだいぶ少ない。他大学の公式Youtubeチャンネルも、ネットメディアのコメンテーターより確実に信頼できる*1、学術的に厳密な議論ができる教授ばかりだが、視聴回数は少ない。
つまり、理想とされる「建設的な議論」では、視聴率が取れないのだ。
そこで、「朝まで生テレビ」のように、バチバチの対立構造が役に立つ。論文を読む時間や気力が無い視聴者層にとって、エンタメとしてコメンテーターの喧嘩は見てて面白い。
加えて、単純化も必要だ。「10分で分かる〇〇」という動画の再生回数は、(少なくとも3000回よりは)多い。教授が4年かけて博士課程を取得し、大量の論文を読んでやっと分かる政治や経済を、10分で分かるはずがないのだ。仮に分かったと感じても、単純化しすぎて歪んでいる。しかし、「簡単に分かるなら知りたい」という視聴者にとっては、観るきっかけになるため、必要な単純化だ。
ネットメディアの議論ができる限り建設的であることに越したことはないが、対立構造や単純化と言った「建設的でない」エンタメ要素があって、はじめて視聴率が保たれる。「ネットメディアは、煽らずに議論しよう」は理想論として分かるが、それだと視聴率が3000回になるだけだ*2。
上記の意見は、私の個人的な分析を基に出した結論だ。ネットメディアに関する論文を、参照する必要があるだろう。また違った結論が導き出されるかもしれない。