通説以上、陰謀論未満

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国民に本音を隠すことも大事〜消費増税とデジタル庁から学ぶ〜

政府に「なんでも本音で話せ」と考える人がいるが、建前と本音の使い分けは非常に重要だ。消費増税とデジタル庁の二つを例に、その理由を説明する。

政府の建前「社会保障のための増税」、本音「国債の格付け維持しようとしてますよ」

2019年、消費税率が10%まで引き上げられた。財務省は建前として「社会保障のため」と言うが、本音はマーケットに対して「財政健全化して、国債の格付けを維持しようと努力してますよ」とアピールするためだ。

日本政府は、消費増税をすることで財政健全化に近づく努力を金融機関やIMF国際通貨基金)、マーケット等にアピールし、国債の格付け維持を試みている。少し複雑な内容のため、詳細は次回のブログで説明する*1。ここでは少なくとも、「社会保障のため」という理由が建前であることだけ覚えてほしい。

「じゃあ本音で言ってよ」という人もいるかもしれない。しかし、仮に首相が「国債の格付けを維持するために、消費増税します」と言っていたら、何人の国民が納得するだろうか。ほとんどの国民は、「格付けって何?」「国債って何?」「IMFって何?」となり、納得しないだろう。したがって、日本政府は国民に納得してもらう形で、本当の理由を歪めてでも建前を言う必要がある。「みなさんの年金、医療、そうした社会保障のために、消費増税をします」と言うと、多くの国民が納得するだろう。

 

デジタル庁の建前「マイナンバーが便利です」、本音「どの省庁にも手出せるの最高!」

デジタル庁の本音と建前についても考えてみよう。デジタル庁の建前(アピールポイントと言っても良い)は、なんと言ってもマイナンバーカードの便利さだろう。しかし本音は、「各省庁に横槍を入れられる」ことだ。

 

「じゃあ本音で言ってよ」という人もいるかもしれない。しかし、仮にデジタル庁が「各省庁に横槍を入れるために、デジタル庁を作りました」と言っていたら、何人の国民が納得するだろうか。ほとんどの国民は、「省庁なんて私たちの生活に関係ないよ」「横槍を入れたところで何になるのよ」と思い、納得しないだろう。この記事を読んでくださっている方は違うかもしれないが、大抵の国民は政治に興味などない。したがって、日本政府は国民に納得してもらう形で、本当の理由を歪めてでも建前を言う必要がある。「デジタル庁がマイナンバーカードの利用を促進します。そうすると、運転免許証がいらなくなるかもしれないし、引っ越しも楽になるよ」と言うと、多くの国民が納得するだろう。

 

消費増税とデジタル庁の例を基に、本音とは別に、国民が納得する建前が必要な理由を分かっていただけただろうか。

これは、外交にも当てはまる。国際会議やスピーチで毎度本音を言うのでは無く、他国を刺激しない形で、ある程度の建前を言うことで適度にアプローチしなければならない

 

もちろん悪用される建前もある

本音と建前が悪用される場合もある。

トランプ元大統領は、アメリカを国際社会から距離を置く際、「国際社会に関わりません」という国民が怒りそうな言い方ではなく、「アメリカ・ファースト」というポジティブな表現をした。

第二次世界大戦ガダルカナル島の戦いで大敗した旧日本軍を、当時の日本政府は「負けたので撤退します」という国民が怒りそうな言い方ではなく、「転進」というポジティブな表現をした。

ウクライナ侵攻をしたロシア軍は、ウクライナハルキウという街で負けたが、ロシア政府は「負けたので撤退します」という国民が怒りそうな言い方ではなく、「配置転換」というポジティブな表現をした。

 

真実は複雑で難しいことを最初の記事で紹介したが、結局、良い建前も悪い建前もあるという話だ。

happa-shuzo.hatenablog.com